3月25日の中野区議会第1回定例会最終日に、中野区基本構想が上程され賛成多数で議決されました。
基本構想は中野区の最上位に位置する基本指針です。日本共産党議員団は、以下の点を指摘し、反対をしました。

(中野区基本構想への反対討論)
区はこれまでも、中野区基本構想と新しい中野をつくる10か年計画は一体的なものであるとしてきました。現在の「基本構想」は、2005年度にそれまでの基本構想を改定し、2010年度にその一部を改定し、今日の基本構想となっています。
2010年度に、「10か年計画(第2次)」に落とし込んだ施策展開を行っていく上で、計画体系の最上位に位置する基本構想と齟齬を来したため、「一部に所要の改定」が行われたものです。「10か年計画」を変えるために基本構想の変更がなされたわけです。
さて、今回の基本構想は、「社会経済状況の変化や社会動向等を見据えた」全面的な改定であるとしています。区の組織体系に合わせた領域区分の設定など合理的と思える面がある一方、「10か年計画(案)」で示された施策に引っ張られる形で、中野のまちの将来像が描かれ、その実現に向かう方針・政策の方向性が記されています。「10か年計画」が5年を経たら見直しされていることに合わせて、基本構想の改定が必要になるというもので、やはり今回も本末転倒と言わざるを得ません。
中野区基本構想の第2章中野のまちの基本理念は、そのとおりであり賛同できます。しかし、この基本理念の実現にあたって、これまでの、そして、これからの区政の方針や運営がどうであるのかが厳しく問われていると考えます。

反対理由を述べます。
1つ目に、基本構想では、「時代の変化を踏まえ…」とありますが、そうであれば、今日の看過できない貧困と格差の広がりに対して、区が区民に寄り添い少しでもその解決にあたることが求められています。しかし、暮らしと福祉を守り支えることに関しては、これまでの区政の延長としか見ることができません。「区政運営の根幹となる構成はそのまま引き継(ぐ)」としている「10か年計画」をもとに、区民への様々な負担増とサービス削減、そして区民要求にもまともに応えてこなかったことを改めないのであれば、区民からの理解は得られません。

2つ目に、大規模開発偏重の方針をそのまま進めていくものになっています。
まちづくりは、区民・住民の合意を基本に進めていくものであると考えます。
中野駅周辺のまちづくりでいえば、これまでも“にぎわい”などのフレーズを乱用し、緑と広場、環境と防災、区民参加を基本としたまちづくりに逆行して大企業呼び込みと環境破壊、脆弱な都市を加速させる開発を進めてきました。今日では、「グローバル」や「国際競争」などと粉飾していますが、いっそう区民の願いとかけ離れたものにならざるを得ません。旧態依然としたまちづくりで良いのかが問われています。
西武新宿線の連続立体事業に伴うまちづくりの名で都市計画道路整備などを強行しようとしていることも問題です。50年、60年も前に決めた都市計画道路をまともな検討もなく、理由だけを変えて整備に突き進もうとしています。車が減り続けているもとで、住民追い出しの道路整備は問題が大き過ぎます。

3つ目に、児童館・U18プラザの廃止、区立幼稚園の廃止・転換、地域図書館の統廃合など、機能の改変を理由とした区民施設の廃止・統合、売却、民営化の問題です。
例えば、第4章「Ⅳ 誰もが成長し続けるまち」の「安心して産み育てられるまち」のなかで、「地域の子育て支援の拠点の整備が進み…」と記されています。区民は、よもやこれが商店街の空き店舗等を活用した「子育てひろば」だとは気づきません。地域で子育て支援の場所があるから、児童館・U18プラザをなくして良いともなりません。また、「Ⅷ-3 将来を見据えた行財政運営」のところで、「…、区民が長く親しみ、利用できる区有施設が整備、運営されてい(る)」との記述があります。議会に現在策定中の中野区公共施設総合管理計画(建物編)の考え方が報告されましたが、専ら財政面だけの内容となっています。各施設についてのあり様は、「個別計画で示す」としています。「10か年計画」との整合性を保つ必要があるため、児童館・U18プラザ廃止後の活用は「10か年計画(案)」では触れず、廃止だけを打ち出しています。行政都合だけによる施設のリストラ計画の押し付けは、断じて許されません。

4つ目に、「行財政運営の基本原則」に係っての問題です。
基本構想では、民営化や民間委託などをいっそう進めていくことが謳われています。中野区の公的責任の後退・放棄へと繋がりかねません。民間活力の導入といわれてきましたが、民間のために区行政が環境・条件を整えている様は、民間事業者への“おもてなし”であると同時に、安上がりなサービスの押しつけであって、区民のためになっているとは言い難いものです。区職員のスキルが継続されないことも問題です。
また、区は、基本構想、10か年計画は、財政的な裏付けを持ったものとして、制定、策定すると言ってきました。ではそうなっているかと言えば、毎年の予算時に財政運営の考え方で修正しているのが現状です。もともと、5年先、10年先の財政を落とし込むことに無理があります。問題なのは、基準となる財政規模が決められ、それだけが独り歩きしている。結果、区民生活を尻目に、基金積立は巨額になっているということです。

5つ目に、区民参加についてです。
第4章の「Ⅷ 区民とともに築く持続可能な区政」、「区民意思と合意に基づく政策決定」のところでは、「…、公平・公正で、開かれた区政運営の基盤となる政策決定過程への参加の仕組みと機会の拡充が図られてい(る)」としています。自治基本条例に基づいて情報提供や意見交換会、パブリックコメントを行っていますが、区民の意見を聞き、区民の参加を得て、政策を決めていこうという姿勢は感じられません。仕組みや機会を作っても、魂が入っていなければ意味を持たないばかりか、信頼を損なうことになります。

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