<議事録より抜粋>

子ども施策について

 次に、子ども施策について伺います。

子どもの貧困の克服について

 初めに、子どもの貧困の克服についてです。
 区長は、施政方針説明の中で、「中野区を子育て先進区へ」と述べられました。子育てしやすい区政への転換は多くの区民・保護者の願いです。
 主に経済格差によって生じている子どもの貧困への対策が、国とともに地方自治体での取り組みが待たれています。その点で、区内の子どもの状況把握が欠かせません。区は「これまでも子育て支援サービスをはじめとしたさまざまな領域で、支援の拡充や所得に配慮した利用者負担を行うなどにより、課題を抱える家庭の状況を把握してきた。これにより、必要な支援が適切に行われるよう、施策を展開してきている」と述べてきました。相談事業の充実や子育て関連の施設や施策実施の中で実態を承知することもあるでしょう。しかし、表面化しにくい面もあります。子育てにかかわる事業の申請時だけにとどまることなく、子どもの貧困の実態調査を実施していくことが必要ではないでしょうか。見解を伺います。
 子育て支援を目的に、国保に加入する18歳未満の多子世帯の均等割の軽減について伺います。
 国民健康保険の保険料は、応能割である所得割と、世帯員の人数に基づいた均等割を合算して保険料額を定めています。しかし、他の被用者保険は均等割負担を求めていません。それゆえ、多子世帯の国保料が高くなっています。第1回定例会本会議でも同様の質問をさせてもらい、その際「平成30年度の保険料率の算定に当たり、所得割と均等割の賦課割合について、均等割を低くすることで低所得者と多子世帯の保険料負担に配慮したい」との御答弁でした。
 今年度から、多子世帯の国保料の減免に踏み出す自治体が各地で出てきています。「国保の都道府県化」のもとでは、地方単独の保険料軽減に充てる法定外繰り入れは“解消すべき繰入"と扱われますが、国保法の規定によって「保険料の減免に充てるため」の繰り入れは“続けても良い繰入"に分類されています。国保法第77条は、被保険者に被災・病気・事業の休廃止などの「特別な事情」がある場合、区市町村の判断で保険料を減免できることを規定しています。この規定を活用し、多子世帯を「特別な事情」と認定することで、負担軽減を図ることの検討をしてはいかがでしょうか。伺います。

待機児童の解消について

 次に、待機児童解消について伺います。
 初めに、ことし4月1日の待機児童数は何名だったのか、昨年度と比べてどうであったのか、伺います。
 区が進めた区有施設・公有地の活用による待機児童解消緊急対策における保育施設整備、いわゆる認可外区立保育施設について伺います。この区立保育施設は、中野駅を境に北部地域に7カ所整備されました。家から離れている。通勤で利用する駅から遠い。就学前から通年で通えない。などの保護者の声を聞きます。整備に当たっては、公園を一時閉鎖する。園舎整備のため公園の樹木を伐採した。住民・利用者からの反対や見直しの意見があったにもかかわらず強行をしました。しかし、結果は5月時点で約3割程度の入所にとどまりました。緊急対策として区立保育施設の整備、そのことはやむを得なかったと思いますが、あまりにも検討が不十分だったのではないでしょうか。区は、このたびの結果をどのように受けとめていますか。伺います。
 待機児童対策は、認可保育園の増設を基本に進めることが必要です。そのために、一つは保育園の整備場所を区が責任を持って提供・誘致することが有効であると考えます。廃校となった旧小中学校の一部を活用した増設や上高田四丁目都営住宅の公園予定地での増設。また、現在民営化に移行するため仮園舎として使用している民間委託の保育園の場所についても、移行後、保育園増設に活用することを検討してはいかがでしょうか。
 二つ目に、保育士不足を解消するために一層の保育士への処遇改善支援を実施することを求めます。御答弁ください。
 区立保育園の民営化について伺います。
 区長は、全園民営化の方針を見直すことを明言しました。我が会派として再三述べてきましたが、今日の民営化は待機児童解消に逆行します。区は「1園当たりおおむね10人程度の保育定員の増加が図られる見込み」と言いますが、待機児童の多い0歳児から2歳児の定員枠はさほどふえません。区は、民営化に人員を割くよりも、待機児童対策の強化にこそ人員を割くべきです。区立保育園を残すのであれば、退職不補充を改めて、区職員として保育士を採用することが必要です。新卒採用であれば、人件費を圧迫することにはなりません。現に、2015(平成27)年度から3年間は新規に区保育士を採用してきました。区立保育園の民営化は一度ストップして、待機児童解消を最優先とした保育行政を行うべきではないですか。伺います。

区立幼稚園について

 次に、区立幼稚園について伺います。
 区長は、施政方針説明の中で区立幼稚園について「存続させる」ことを明言されています。先日、会派で区立かみさぎ幼稚園と区立ひがしなかの幼稚園を視察させていただきました。学級編成は、3歳児・4歳児・5歳児のクラス、3年保育を希望する保護者が多いのが現状です。かみさぎ幼稚園では、71名の幼児数に対して特別な支援を必要とする幼児は18名、ひがしなかの幼稚園では、73名の幼児のうち4割を超える幼児が対象であるように、特別な支援を必要とする幼児が大変多く通っています。区立幼稚園の存在が欠かせない理由の一つがここにあります。改めて、区立幼稚園の役割についての見解を求めます。
 来年度から、区立幼稚園における幼稚園型一時預かり事業が実施されます。預かり時間は14時から17時を予定し、通常の幼児教育(保育)時間後の実施になるかと思いますが、人員体制の強化が必要となるのではないでしょうか。伺います。

児童館と学童クラブについて

 次に、児童館と学童クラブについて伺います。
 区長は、児童館の全館廃止に反対を表明し、存続を求めて選挙戦を戦われました。多くの子育て世代、子どもたちから歓迎されたと思っています。
 施政方針説明では、「児童館の全廃についても見直し、一定程度存続させる」と述べられました。中野区では、以前は1小学校区に1児童館という構想のもとで児童館が配置されていました。キッズ・プラザを小学校内に整備することで、児童館廃止とU18プラザへの転換が進められてきましたが、その後、U18プラザについても廃止となりました。地域で望まれている施設をなくしてしまうことには、やはり問題があります。
 中野区で子育て中の保護者で構成する子育て環境向上委員会という団体が、「『子育ての悩み』どこに(誰に)相談してましたか?」という「子育て世代へのアンケート調査」の結果報告書をまとめています。報告書の中で、「ママ友(パパ友)」に次いで、「児童館(職員や相談員への相談)」が多かったことがわかります。児童館の仲間づくり事業でママ友ができたという声も多かったとの記述もありました。
 子育て支援の拠点として、地域にバランスよく配置し、機能も充実していく必要があるのではないでしょうか。「一定程度存続させる」と言いますが、どのような構想をお持ちなのでしょうか。伺います。
 また、中高生の居場所づくりも必要です。現在、中高生に対しては、活動発信応援助成を実施して、中高生の活躍機会、発表機会をふやす活動を応援しています。この事業を続ける上でも、中高生の活動場所は欠かせないと思います。中高生の居場所としては、どのような構想をお持ちなのでしょうか。また、施設配置や運営に当たっては、ぜひ中高生たちの参画を促してほしいと考えますが、答弁を求めます。
 学童クラブについてお聞きします。
 学童クラブの待機児童数は、ことしの4月時点で80名。この事業においても待機児童の解消を図ることが求められています。個別に要件を把握しながら入所を決定しているとは思いますが、新3年生が退所する事態が生まれていることや、キッズ・プラザ併設の学童クラブにおいては、キッズ・プラザを代替場所として利用していることを聞きます。しかし、学童クラブは、放課後に保育が必要な児童の生活を保障する役割があります。学童クラブの質を確保しながら、待機児童解消を図ることを求めます。今後どのようにして待機児童を解消していくのでしょうか。伺います。
 この間、学童クラブの待機児童対策として民設民営による増設が行われてきました。現在、全ての学童クラブが民間事業者による委託により事業が行われています。区が「運営ノウハウを保持し、民間事業者に対する適切な指導・評価を行う」ためには、また、適切な支援を行うのであれば、学童クラブ事業においても直営での運営が一定程度必要ではないでしょうか。新たに増設をしていく際には、直営での学童クラブ運営の実施を検討されてはいかがでしょうか。伺います。
 また、学童クラブ保育料について1点伺います。
 学童クラブの在籍児童で、2人以上の児童が在籍する世帯があります。現在、学童クラブ保育料は1人4,400円、おやつ代1,250円が加わると5,650円になります。兄弟で在籍すれば1万円を超える負担です。子育て支援の観点から、2子以上の児童が在籍する世帯に対して、学童クラブ保育料の減額の検討を求めますが、いかがですか。伺います。

「子どもの権利条例」について

 次に、子どもの権利条例について伺います。
 区長は、選挙のさなかに「子ども権利条例の制定」について言及されました。
 日本において「子どもの権利条約」を発効したのは1994年5月です。それから24年と四半世紀近くが経過しましたが、子どもたちをめぐる状況の厳しさは今なお続いていると言えます。子どもは、小さいときから人間として扱われることを通じて、かけがえのない存在として、人間としての尊厳と豊かな個性を持つものとなります。子どもの権利条約は、子どもの「人格の完全なかつ調和のとれた発達」に向けて、子どもの権利が「子どもの最善の利益」を考慮して、子どもを取り巻くあらゆる場において実現されることを求めています。そのために、第一に、子どもが保護の対象・客体であるだけでなく、何よりもまず権利の主体であり、しかもその権利を子どもみずからが行使することができるとの立場に立っています。条約を貫くこの基本的思想は、条約の随所にあらわれていますが、とりわけ、「自己の意見を形成する能力のある子どもは、自己に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利」を認めて、子どもに意見の表明の権利を保障している点に端的にあらわれていると思います。
 国連の子どもの権利委員会においては、法制度や運用だけでなく、子どもたちが置かれている現実が具体的にどれだけ変わったのかが厳しくテストされ、審査されることになっています。子どもの権利委員会からは、日本政府に対して、幾度となく勧告が出されています。
 そこで伺いますが、子どもの権利条例の制定に当たっては、いかなる考え方や方法で進められようとしているのでしょうか。中野区の教育や子育て施策にどのような形で生かされていくとお考えですか。また、例えば、他市で実施しているような子どもの権利状況の改善を図るための制度――子どものオンブズパーソンを設けることも検討されてはいかがかと考えますが、御答弁を求めます。

<答弁、議事録より抜粋>
○区長(酒井直人)
 保育園の民営化、それから待機児童解消優先策についてでございます。区立保育園の民営化は、民間の活力を活用して多様な保育ニーズに対応することと、老朽化した施設を建てかえることとあわせて、定員も拡大するというものでございます。現在進められている個別の計画の見直しにより、職員の採用や財政負担など区の後年度負担やさまざまな影響が想定されることから、これについては慎重に検討すべきであると認識しております。
 区立幼稚園の役割についてでございます。中野区においては、私立幼稚園を中心に幼児教育の環境が整備され、地域的偏在の解消を図るため区立幼稚園が配置された経緯がございます。区としては、幼稚園、保育園等、区立、私立を問わず、就学前教育の充実に向け、保幼小連携による教育の充実を進めているところでございます。例えば、発達に課題のある児童の保育について、区立園の持つノウハウを私立園と共有するなど、連携しながら取り組みを進めてまいります。区は、国の方針に基づき、これまで区立幼稚園2園を認定こども園として整備してまいりましたが、幼児教育の充実を図りつつ、多様化する保育需要の受け皿として幼稚園の区立の認定こども園化についても検討してまいります。
 それから、児童館を一定程度存続することについてでございます。児童館では、遊びによる健全育成や子育て相談、乳幼児の母親等の仲間づくり、地域育成団体の活動支援などを行っております。今後、児童や子育てなどに係る現状や、課題に応じた機能や役割について整理するとともに、あるべき姿を定めた上で必要な施設数や配置を考えてまいります。
 次に、中高生の居場所についてでございます。中高生の意見表明の場として、従前からのハイティーン会議に加えて、地域の育成者の健全育成の取り組みに対する支援を拡充したほか、中高生への施策としては中高生活動発信応援助成事業や、先輩に学ぶライフデザイン応援事業を行い、中高生の社会体験機会を支援する施策の充実を図っているところでございます。中高生の活動支援については、中高生の活動そのものに注目した支援を進めてきたところでございますが、中高生がその運営に主体的に参加できる活動拠点といった視点も求められていることから、新たな活動拠点のあり方については中高生の参加を得ながら検討してまいります。
 学童クラブの待機児解消と直営での運営についてでございます。学童クラブの待機児童対策としては、ニーズの将来予測に基づき、区立学童クラブの定員拡大のほか、民間学童クラブの誘導により適正配置を行う予定でございます。学童クラブ運営は、多様化するニーズへの対応やキッズ・プラザ事業との連携のとれた一体的運営等を勘案し、民間事業者へ委託しているところでございます。区職員による助言や指導と事業者の創意工夫により、良好な運営がなされており、おおむね保護者の満足度も高いと考えております。従事職員の勤務形態等の面からも、直営は考えておりません。
 学童クラブ在籍児童の第2子以上に対する保育料軽減措置について質問がございました。多子対策等含む学童クラブの保育料のあり方については、本定例会中にお示しをする予定でございます。
 次に、子どもの権利条例、子どものオンブズパーソンについての質問でございます。日本が子どもの権利条約を批准してから約二十数年がたちますが、区ではこれまで条約の趣旨が基本構想をはじめ新しい中野をつくる10か年計画や子ども・子育て支援事業計画に盛り込まれていることから、条例制定についてはこれまで検討してきませんでした。
 私は、「中野区を子育て先進区へ」を区政運営の柱の一つとしてまいります。子どもを地域社会全体で見守り、希望ある未来に向けて子どもが成長することができるまちの実現を目指すとともに、区と区民が子どもの権利を保障する意義をしっかりと共有し、区政を進めていくことが必要であり、子どもの権利条例を制定することが必要だと考えております。子どもの権利条例を制定している多くの自治体では、人権の侵害に関する相談や救済申し立てに係る制度を構築しており、条例制定とあわせて検討してまいります。

〔子ども教育部長戸辺眞登壇〕

○子ども教育部長(戸辺眞) 私からは、子ども施策について、まず子どもの貧困実態調査についしてでございます。
 これまでの妊娠・出産期から切れ目のないさまざまな支援の中で、所得に応じた利用者負担や個々のサービスごとにさまざまな課題を抱える家庭の状況に応じて必要な支援を行うよう取り組んできております。こうした中で、子どもの生活実態やニーズに関しては、各施策の利用状況等に加えて、東京都等での同様の調査結果により確認をしているところでございます。
 しかしながら、子育て世帯を取り巻く環境は変化していることから、子どもの生活実態を調査して区の施策の有効性や認知度、また支援のニーズ等を把握し、施策の見直しに反映していくことが必要であると考えてございまして、具体的な調査方法等について研究、検討をしてまいります。
 次に、平成30年4月1日時点の待機児童数という御質問でございます。平成30年4月1日現在での待機児童数は、昨年の同時期より204人減り、171人でございました。
 次に、待機児童解消に向けて行った緊急対策の結果についてでございます。昨年度、待機児緊急対策といたしまして、区立保育室7室を整備したところでございますが、整備の前提条件といたしまして、早期に工事に着手し、平成30年4月に開設が可能な場所という条件だったため、地域的に偏りが生じているというものでございます。その地域的な偏りに加えまして、開設当初の入所率が低いということにつきましては、施設完成が平成29年度末近くであったため、入所希望者募集を2次募集から開始したことによって、周知が不足していたことがその一つの要因であると考えてございます。
 平成30年4月1日現在の7室合計の入所率は33%で、最も入所が低かった施設は7%でございました。7月1日の入所予定者数は49%となり、低い施設でも10%にふえ、徐々に利用は進んでございます。これらの施設は、年度途中に復職する方や転入される方の受け皿になると考えてございまして、今後は地域ごとの保育需要を踏まえ、新規施設を整備することで待機児童を解消してまいりたいと考えてございます。
 次に、待機児童の解消に係ることで、認可保育所用地、保育士の処遇改善という御質問でございます。区有地の保育施設への活用につきましては、例えば温暖化対策推進オフィスの保育施設への活用など、区全体で検討し、方向性を決めているところでございます。今後も、さまざまな用地の活用について検討してまいります。
 保育士の処遇改善につきましては、昨年度から保育士に内定し、就職決定した方への就職奨励金の支給や、保育所従事職員への宿舎借り上げ支援事業として補助金を支給しているところでございます。今後も保育士確保に係る支援策について検討し、対応してまいります。
 次に、区立幼稚園についての御質問でございます。一時預かり事業の人員確保についてでございます。幼稚園型一時預かり事業に従事する職員については、保育士等の資格を有する職員を配置する必要があると認識してございます。平成31年4月の事業開始に向け、今現在準備を進めているところであり、事業実施に当たり、必要な人員配置についても検討しているところでございます。
〔区民サービス管理部長上村晃一登壇〕

○区民サービス管理部長(上村晃一) 私からは、多子世帯への保険料の負担軽減対策についてお答えいたします。
 国民健康保険法第77条には、特別の理由があるものに対し保険料を減免し、またはその徴収を猶予することができると規定されており、中野区では災害等で生活が著しく困難となった方の保険料を免除しているところでございます。多子世帯につきましては、国の制度の問題として解決すべきことと考えてございますので、区として保険料を減免する考えはございません。

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