140911/本会議質問

 只今、議題に供されました第61号議案 中野区特定教育・保育施設及び特定地域型保育事業の運営の基準に関する条例にたいして、日本共産党議員団の立場から反対の討論をおこないます。

 はじめに、本議案への可否にあたり、その前提の問題に触れます。
 子ども・子育て関連三法に基づく子ども・子育て支援新制度(以下、新制度と呼びます)は、これまでの保育所、幼稚園の制度を根底から改変するものであり、多くの問題を抱えています。
 そもそも新制度は、保育の市場化をめざした保育所制度「改革」をめざしたものであり、これに幼稚園との一体化、認定こども園化が加わり、さらには教育制度「改革」など、政治的な思惑がからみあった結果、非常に複雑なものになっています。
新制度は介護保険制度をモデルにしており、最大の特徴はこれまでの市町村の責任によって保育を提供する現物給付の制度を改め、利用者と事業者の直接契約を基点にする現金給付の仕組みへの変更です。市町村は、法律でいえば保育の契約に介入することはできないため、市町村の責任が後退し、保育の市場化に道をひらくことになりかねません。さらに、保育所、幼稚園、認定こども園などの定員20人以上の施設類型に加えて、新たに地域型保育の各事業類型である小規模保育、家庭的保育、事業所内保育などが導入されますが、定員が19人以下と規模が小さいことを理由に、保育所等に比べて保育者の資格要件の緩和などが国基準に盛り込まれ、その結果、施設・事業によって保育に格差が持ち込まれることになりました。
 先に議決された第60号議案で、小規模保育B型は、保育従事者が国基準と同様の5割以上の保育資格者に留めているため認められません。A型と同じ規模であるにもかかわらず、区は「保育士の資格ではなく事業で判断」とか、「A、B、C型と選択の幅が広がる」とか、およそ認可基準を定めて保育の質を引き上げるという考えを持ち合わせていないことが明らかになりました。他の14区で基準の上乗せを実施予定していることからも、また、現行の認可外施設である認証保育所で保育士6割以上としている点からも、保育格差の解消に努めるべきでした。

 以下、本議案への反対理由を述べます。
1つ目に、保育所等の利用者に、これまで行っていなかった上乗せ徴収を認めていることです。特定教育・保育施設の運営、及び特定地域型保育事業者の運営では、「区が定める利用費・日用品等実費を徴収可」としています。
区は、「事業者は区と協議してでなければ徴収することはできない」と言いますが、条例に盛り込んでいる以上、何の歯止めにもなりません。「保護者から文書による同意を得る」とも言いますが、果たして保護者に選ぶことができるのでしょうか。断ることができずに、負担を強いることになりかねません。低所得世帯にとっては重大な問題です。上乗せ徴収は国の「従うべき基準」に該当する項目ですが、保育の平等の観点から、区が基準を設けることで、極力、上乗せ徴収はしないことを示すことはできたはずです。
 
2つ目に、認定、利用手続き、利用調整などに関する、区の責任についてです。
1号(3歳以上、教育のみ)、2号(3歳以上、保育が必要)、3号(3歳未満、保育が必要)の区分に加えて、2号、3号については、パート就労などに対応する保育短時間(利用上限8時間)と、フルタイム勤務に対応する保育標準時間(利用上限11時間)に区分されることになりました。
 法律では、短時間と標準時間の利用上限時間は月単位で定めるとされていますが、政府のFAQ(よくある質問)では、短時間は施設が設定した9時から5時までのコアタイムの利用を基本に、それ以外の時間帯は延長保育扱いとする、などと説明しています。しかし、延長保育や土曜日の保育についてはどう考えるのか、区もまた示していません。
第2に利用調整は、保護者の希望と優先度を考慮して区がおこなうことになりますが、保育所以外の直接契約の施設については、区は施設への利用要請と利用者へのあっせん程度しかできないはずであり、果たして十分な利用調整ができるのか、甚だ疑問です。

3つ目に、本条例では、幼保連携型認定こども園について定めています。条例案が提案される前の議会報告では、「幼保連携型認定こども園を政策的に推進していく」としていました。現在、学校教育法を根拠に定められ、私学助成法により東京都を通じて補助金を受けている区内の私立幼稚園が、認定こども園に移行することは考えにくく、私立幼稚園からもそうした意思は示されていません。また、認可保育所の待機児童が解消されないもとで、私立保育所が認定こども園に移行するとも考えられません。とすると、区立の幼稚園と保育園が幼保連携型認定こども園に移行されかねないことが危惧されます。また、私立幼稚園等で行っている預かり保育の補助金をなくして、給付扱いすることで、認定こども園への誘導を図っていくことも考えられます。

 4つ目は、現行の認可保育園(新制度の保育所)を基本に、待機児童解消と保育の質を確保すべきなのに、そうした姿勢が見られないことです。
児童福祉法24条1項が残ったことにより、引き続き中野区に保育所の実施責任があります。待機児童の解消は新制度でいう保育所を基本にすすめていく必要があります。区がおこなったニーズ調査でもそのことは明らかです。
今年度4月1日現在には、旧定義で635名の待機児童が生まれました。昨年度同月比で155名増えたことになります。たとえ小規模保育事業などで保育を受けることになったとしても、新制度の下でいう保育所を希望していれば待機児童として把握すべきです。法制度上、児童福祉法24条1項があっても、「新制度」において、政府がそのことに極力触れないといった欠点を抱えているもとでは、区が条例の中で、きちんと明記すべきでもありました。しかし、その姿勢も努力の跡もみられなかったことは、残念でもあり、容認し難いと言わざるを得ません。

今日、保護者・区民の要求から見て、待機児童解消と保育の質の確保、そのための区の責任と役割の発揮が求められています。新制度のもとでも児童福祉法24条1項を根拠に保育所の増設と施設・職員配置の改善と充実を図ることが極めて大切であるということです。
区がきちんとその姿勢に立って、実施義務の責任と役割を発揮することを強く求めて、本議案への反対討論とします。

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