1.所信表明と区長の政治姿勢について
○区長は所信表明の中で、「区政運営16年を振り返って」、「マネージメント不在だった区政の改革に着手し、基本構想、10か年計画を基軸として『目標と成果による管理』に基づく区政運営を確立し、財政再建と具体的な施策の充実を進めてき(た)」と述べています。「2016年度決算ベースで基金残高が約676億円、区債残高と土地開発公社への債務負担行為額の合計が約271億円」となったことは事実ですが、いかに行ってきたかが問われています。
2000年代初めは歳出削減圧力が強くなり、「官から民へ」という小泉「構造改革」路線に中野区は乗っかって、区立保育園の民営化や様々な事業の業務委託、指定管理者制度などの活用によって人件費の大幅削減を行い、公的責任を後退させてきました。当時は比較的財政規模が小さい中でも、予算を立てながら使わず余らせ、実質収支は25億円~42億円と高すぎる黒字率でした。歳入で言えば税と社会保障の改悪が続けられ区民の負担は増え続けました。教育予算が切り縮められてきたのもこの時期でした。2008年にリーマンショックが起こり、その後の日本経済の落ち込みや地方財政の危機も言われましたが、その時でさえも区は300億円を優に超える基金残高を維持していました。2011年に「財政非常事態」として、事業全体の抜本的な見直しを宣言し、それを理由に高齢者福祉センターの廃止や障害者福祉手当の削減などをおこないました。一般会計で財政規模が1000億円を超えるようになってからのこの10年間は平均92億円もの積立金、ここ数年は100億円超の積立です。「基金積立と基金繰入を計画的におこなっている」と言ってきましたが、この10年間で315億円も積み増しをしています。過剰な財政危機の演出により、区民への負担増と施策削減が行われたのが実態ではないでしょうか。財政非常事態の宣言は解除すべきです。見解をうかがいます。

○所信表明では直接触れていませんが、参加と自治のあり方についてもお聞きしておきます。区長が初めて就任した一期目の時に、中野区自治基本条例がつくられました。
 もともと中野区では住民参加がすすめられ、住民自治も積極的に発揮されてきた歴史があったと思います。制定の際の議会や区民の中でも、そのことを踏まえた議論があったと認識しています。ところが、今日の区政運営をみると、住民参加は形だけは行うが、意見は聞き置くだけになっています。
 例えば、平和の森公園の再整備は、現在の公園となった歴史的意義も区民合意もまったく無視して強行しています。区立保育室の整備についても、その必要性は認めつつも、説明会での地元住民の意見に耳を貸さずに翌日には工事に着工するなど、およそ行政の振る舞いとは思えません。
 さらに、「第3次の新しい中野をつくる10か年計画に基づく区政運営は着実に軌道に乗ってい(る)」と述べられましたが、児童館廃止を既定方針としながらU18プラザ廃止を行うことに対して、区民・利用者から見直しが求められても「決まったことだから」と一顧だにせず、その一方で、10か年計画には保育園名が明記されていない区立保育園の民営化を、仮園舎での民間委託を経て強行することや、環境リサイクルプラザを廃止した後の温暖化対策推進オフィスの活用をめぐる混迷など、行政都合による変更が行われています。
自治基本条例の恣意的な扱いをはじめ、区民の参加と自治を余りにもないがしろにしていると言わなければなりません。なぜ、こうした区政運営を続けられるのか。見解をうかがいます。

○所信表明で国民・区民の暮らし向きについての言及がなかったことは残念です。そこで、格差と貧困についてお聞きします。
厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2015年調査)では、日本の相対的貧困率は15.6%、子どもの貧困率は13.9%で、OECD加盟国平均を上回り、とくに、ひとり親家庭の貧困率は50.8%と、断トツの高さとなっています。安倍首相は、日本の相対的貧困率が、前回の2012年調査より低くなったことを根拠に、「アベノミクスで貧困が改善した」と言います。しかし、相対的貧困率は、全国民の所得の中間値を基準に、その半分しか所得のない人を「貧困層」と定義し、全体に占める割合を示したものです。数値が変動したのは、中間層の所得が落ち込んだため、「貧困層」にあたる人の割合が見かけ上、少なくなったからで、生活困窮者の所得や生活は何ら改善されていません。むしろ、中間層が所得を減らし、貧困層は放置され、国民生活はますます落ち込んでいるのが実態です。可処分所得分布は全体として悪化しています。
一方、米誌『フォーブス』の「日本の富裕層」によれば、この5年間、株価上昇の恩恵により、上位40人の資産は7兆7千億円から15兆9千億円へと2倍以上に増えました。「格差と貧困」の是正は、日本社会の健全な発展をすすめる重要な課題です。同時に家計という経済の最大のエンジンをあたため、日本の経済に好循環を生みだして持続的な経済成長を実現する上でも不可欠であると考えます。
そこでうかがいますが、格差を拡大し、貧困を生み出す構造は是正されていないと思いますが、ご認識をうかがいます。また、国も自治体もそうした認識の上に立って、労働分配の是正と社会保障の拡充などに取り組むべきだと考えますが、見解をうかがいます。
○北朝鮮情勢については、「緊迫の度合いを増してい(る)。…核実験やミサイル発射を繰り返してきた北朝鮮に対し、世界は一致して毅然とした態度をもって接していく必要があ(る)」と述べられました。国際社会が望んでいるのは、北朝鮮による核実験やミサイル発射を止めることはもちろん、止めさせる上でも対話による平和的な解決です。今年になって平昌冬季オリンピック開催をきっかけとして韓国と北朝鮮による対話が行われました。競技参加における南北統一チームが結成されるなど、昨年来の緊迫した情勢から一転、平和の祭典にふさわしい取り組みが始まっています。また、開会式に出席したペンス米副大統領は、米国への帰途、ワシントン・ポストのインタビューに対し、北朝鮮が「対話を求めるなら我々は対話をする」と述べたことは注目する動きです。一方、対話を否定し、平昌に行って韓国に対して米韓合同軍事演習の再開を促すなど、軍事対応をけしかけているのは日本政府だけです。
北朝鮮問題は、対話によってのみ解決の道が開かれると考えられますし、国際社会もそのことを望んでいます。また、平昌での南北対話などは歓迎すべきことだと思います。この点での区長の見解をうかがいます。
 
○核兵器禁止条約についてうかがいます。
北朝鮮問題を考えるにつけ、この課題がますます重要になっています。
昨年の7月の国連での核兵器禁止条約の採択を踏まえ、区長の見解をうかがってきました。昨年の3定では、「日本政府に核兵器禁止条約の参加を求めるべき」との質問に、「政府が不参加の立場をとった理由は、核なき世界は保有国と非保有国の現実的な協力プロセスを経て実現されるべきで、条約は…対立を決定的なものにしてしまうとの考えからと認識している」と言い、「核兵器の保有については各国の政策に基づいており、外交交渉については国が判断し行う事項である」と述べられました。
 「国が判断し行う事項」であることも、核兵器禁止条約に対する今日の日本政府の態度も承知しています。問題は唯一の戦争被爆国である日本の政府が「禁止条約」に署名することを区長は求める意思があるのかということです。被爆者をはじめ、地方議会での意見書採択や、平和首長会議加盟の自治体と非核宣言自治体首長の声明など、「核抑止」に固執する日本政府の態度を変えさせ、「禁止条約」への署名を求める世論が広がっています。以前、区長は「核抑止によって成り立っている平和」との認識を示したことがありました。今もこの立場に変わりはないのでしょうか。であれば、いかなる方法で核兵器の使用を禁じ、廃絶ができるとお考えですか。答弁を求めます。

○9条改憲についてもうかがいます。
 日本国憲法の改定が大きな焦点となっています。安倍政権の狙いは9条改憲です。そのために自民党内での議論の1つに、9条1項・2項はそのままで3項目を加えて自衛隊の存在を明記しようとする動きがあります。そのことで憲法9条が、軍事に関する「制限規範」から「根拠規範」に変わることになります。また、「後法は前法に優る」という立法における基本原則からみれば、9条に3項がつけ加えられれば、それと矛盾・抵触する限りで1項、2項は、空文化・死文化することになります。
安倍政権になってから、歴代政権ができないとしてきた集団的自衛権の行使を認め、安保法制=戦争法を制定してきました。そのもとでの自衛隊は、専守防衛や災害救助活動を任務とする自衛隊ではありません。海外で際限のない武力行使が可能となります。9条改憲は国民世論で少数です。9条改憲についての見解をうかがいます。

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