3.文化芸術活動及び施策について

〇2017年6月に「文化芸術基本法」が制定されました。2001年に「文化芸術振興基本法」として議員立法により制定されたものが、16年ぶりに改正されました。この改正で法律前文に「我が国の文化芸術の振興を図るためには、文化芸術の礎たる表現の自由の重要性を深く認識し、文化芸術活動を行なう者の自主性を尊重することを旨としつつ、…」と、「表現の自由」が加えられました。「表現の自由」は、人々の自由な創造活動を促し、文化・芸術の発展に大きく寄与するものです。
 改正された基本法では、第2条の基本理念のところの文化芸術の創造と享受について、旧法では「国民がその居住する地域にかかわらず等しく、…」となっていたのを、「国民がその年齢、障害の有無、経済的な状況又は居住する地域にかかわらず等しく、…」と追加・変更されました。さらに、「文化芸術の施策推進に当たっては、乳幼児、児童、生徒に対する文化芸術に関する教育の重要性に鑑み、学校等、文化芸術活動を行う団体、家庭及び地域における活動の相互の連携が図られるよう配慮されなければならない」と、基本理念の条文に新たに加わりました。未来ある子どもたちが本物の芸術に触れることの大切さを謳った条文が新設された意義は大きく、関係者からも注目されています。その上で、第2条10項で総括的に、「文化芸術に関する施策の推進に当たっては、文化芸術により生み出される様々な価値を文化芸術の継承、発展及び創造に活用することが重要であることに鑑み、文化芸術の固有の意義と価値を尊重しつつ、観光、まちづくり、国際交流、福祉、教育、産業その他の関連分野における施策と有機的な連携が図れるよう配慮されなければならない」と改正の趣旨を述べています。
 文化芸術基本法の目指すところの理解を深め、中野区での文化芸術施策に活かすべきと考えますがいかがですか。うかがいます。

○文化芸術基本法では、「文化芸術団体の役割」を明記し、さらに、「関係者相互の連携及び協働」として、国や地方自治体、芸術団体などの連携を求めています。同時に、国などとの連携はあり得ますが、創造活動、文化・芸術の享受は、ほんらい国の施策とは関係なく行われるものです。文化芸術基本法の審査の際には、議案提案者から「国への協力がないと支援がうけられないと、こういうことがあってはならない」との答弁を得て、国会での共通認識となりました。
ところが、国際芸術祭・あいちトリエンナーレ2019での「表現の不自由展・その後」展示が、脅迫などでいったん中止となり、そののちに再開となりましたが、文化庁は、あいちトリエンナーレへの補助金の全額不交付を、補助金の審査委員会にも諮らずに決めました。不交付理由に「展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実」を認識しながら、その事実を申告しなかったことなどを挙げています。しかし、文化庁には暴力から表現の自由を守る責任があります。それを放棄した決定は悪しき前例となりかねません。「表現の不自由展・その後」を前後して、さいたま市大宮区での公民館だよりへの不掲載、川崎市での映画祭、三重県伊勢市での「市の展覧会」など、全国いたるところで同様のことが起きています。本来、自由であるはずの文化・芸術活動が、芸術家・専門家はもとより、多くの国民の創造活動が委縮してしまいかねません。表現の自由が脅かされれば、民主主義の土台が崩れます。
中野区においては、文化・芸術活動における表現の自由を尊重し、区民公益活動に対する政策助成の支給、区の後援申請・許可などが公正・公平に行われることが必要です。見解をうかがいます。

〇文化芸術基本法の第二章では文化芸術推進基本計画等が述べられています。その第7条の2では、地方文化芸術推進基本計画を努力義務により定めるものとしています。その際、国の「文化芸術推進基本計画を参酌して、その地方の実情に即した文化芸術の推進に関する計画」の策定を求めています。
また、2018年には、「国際文化交流の祭典の実施の推進に関する法律」、「障害者による文化芸術活動の推進に関する法律」が成立しました。これらの法律は、地方自治体に施策の実施や基本計画を作るよう求めています。
 一方で、地方自治体の文化分野の職員が少ないなかで、計画ばかり作成することになって本来の現場の仕事に力が裂けなくなるということが懸念されています。そうなると、国の作った計画を少々手直ししたような、どこの自治体も似たような計画になってしまわないかと、専門家も危惧を表明しています。個々の計画を次々と作るのではなく、新たに作る基本計画で定めるべきと考えますがいかがですか。うかがいます。

○中野区として予算をきちんと確保しつつ、住民が文化・芸術をつくり、楽しむことができるように、区の文化・芸術に関する条例の制定が必要であると考えます。 
2016年の文化庁の調査では、文化振興に関する条例が設置されているのは、23区では13区です。
 文化芸術基本法第35条は、地方自治体による文化・芸術の施策の推進を求めています。条例の設置は、中野区での文化・芸術の活動と施策に安定的・継続的にとりくむ基盤になると考えます。検討を求めます。

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